今ね、恋人達が、レンガで出来た長い坂を肩を組んで歩いてったの。その時にスイッチを押されたみたいに、角度43度の、6番目の季節の微風が、男性が片手に持った、ワインの色を確かめに行ったの。
夕日はその時に、地球のうらがわに入るのを拒んでいたの。
その時にふと思いだしたの。かなり昔に、街で偶然会ったハービーハンコックが言った言葉を。
「君の優しさがこの街を作ってるんだよ。ほら、あの屋根をごらん。あの屋根の色は君が作ったんだよ。あの屋根も、あの老人のしわも。」
その時に急に眩暈がして壁によりかかったの。後から気付いたら、それは彼の背中で、とても長い手で腰に手を回してくれて、川岸に運んでくれたの。
彼は手にドラゴンフルーツを持ってて、左手から水も出してくれたの。
彼のジャケットはシガレットの匂いがしたけど、全然嫌なにおいじゃなかったの。
気付いたら、季節はもう9番目に入ってて、
彼はもういなかったの。
2分経って、女友達が呼んでる声が聞こえて、私はその女友達の所に駆け寄ったの。
「私、ハービーハンコックにあったのよ!さっきまで一緒にいたのよ!」
「そうなの?でも、私が部屋のテラスから見ていたら、貴方は楽しそうに一人でワルツを踊ってたわよ?」
-fake
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